【番外編】学生の社会見学引率

初めての社会見学引率レポート

【番外編】学生の社会見学引率 @(株)松風&(株)モリタ製作所

7月13日に、研究でお世話になっている大阪大学歯学部の教室の学生講義の一貫として行われている歯科業界の工場見学に引率者の一人として参加してまいりましたので、ご報告させていただきます。
今回、私たちが訪れましたのは京都にある株式会社 松風さんと、株式会社モリタ製作所さんです。
2つの会社は京阪電車で3駅ほどの距離にあり、午前は松風さん、午後はモリタさんに伺いました。
当日は、煮えたぎるような暑さで、私より6つ以上は若いはずの学生さんたちも、さすがに参っている様子でした。

(株)松風さんと入れ歯の歴史

【番外編】学生の社会見学引率 @(株)松風&(株)モリタ製作所

京都にある松風という会社ということで、和菓子メーカーと思われることが多いという、松風さんに午前中はお世話になりました。
実は、松風さん凄い会社なのです。
古くは、1922年に当時は海外からの輸入に頼っていた入れ歯に使用する人工の歯(当時はセラミック)を、当時瀬戸物屋さんであった松風さんが初めて国産に成功したのです。
そして、その後も努力を続けられ、今から89年も前に初のレジン歯(現在使用されているものの原型)による人工の歯の製品化を行った会社なのです。
いわば、入れ歯界のパイオニアです。
また、最近では歯科界にとどまらず、歯科の技術を応用してネイル業界にも進出している、今なお成長し続ける歴史ある会社なのです。

1538年当時の入れ歯です!!

【番外編】学生の社会見学引率 @(株)松風&(株)モリタ製作所

突然ですが、入れ歯はいつ頃から日本で使われだしたのかご存知ですか?
現在発見されている最も古い入れ歯は、和歌山県で見つかった1538年頃のものだそうです。
当時の和歌山で入れ歯が使用されていたということは、都では恐らくもう少し早くから入れ歯が使われていたのではないでしょうか?
ちなみに、当時の入れ歯は木製(つげの木)で、口の形に合わせて彫って作られていました。
人工の歯は象牙や馬の骨を歯の形に削って、三味線の糸で入れ歯にくくりつけていたようです。
写真の入れ歯の形に注目していただきたいのですが、実はこの形現在の入れ歯とそんなに変わらないのです。
しかも、木彫りの入れ歯は海外では発見されておらず、やはり日本人の器用さは古来から飛びぬけていたのだと改めて実感しました。

京都にある世界的に有名な企業と言えば・・・

【番外編】学生の社会見学引率 @(株)松風&(株)モリタ製作所


そう任天堂さんです。
なんと、今回訪れた松風さんの隣は任天堂さんなのです!
今回、松風さんを見学することが決まり、お隣の任天堂さんにも見学できるか問い合わせたのですが、内部は企業秘密ばかりで、見学はお断りしているそうでした。残念!

(株)モリタ製作所さんと歯科用機器の歴史

【番外編】学生の社会見学引率 @(株)松風&(株)モリタ製作所

午後は、(株)モリタさんに伺いました。
モリタさんは歯科、耳鼻咽喉科、産婦人科の医療機器メーカーさんで、大阪大学付属病院でも患者さんが治療の時に座るイスの大半がモリタさんのものです。
モリタさんは、トヨタ式と呼ばれる生産ラインで製品を作られています。
これは、一つの製品の組み立てから検査までのすべての工程を流れ作業ではなく、一人の作業員がすべて行うことを理想とした生産方法です。
従って、モリタさんの医療機器は信頼性が高く、谷歯科でも多く使用しています。

患者さんが水平に寝る治療スタイルの実現

【番外編】学生の社会見学引率 @(株)松風&(株)モリタ製作所

今は、どこの歯科医院に行っても、患者さんは横に寝転んだような姿勢で治療を受けられるかと思います。
しかし、1964年にモリタさんが初めて寝転んで治療を行うことができる診療台を開発するまでは、患者さんはイスに座った状態で歯科医師は患者さんの正面から、かなり無理な姿勢で覗き込むようにして治療を行っていました。
歯科医師の現役期間が延びたのは、水平位での治療が可能になったからかもしれません。
そして、谷先生も、現在のようにスポーツを楽しめていなかったかもしれません(笑) 。

おまけ【1】診療台の歴史

【番外編】学生の社会見学引率 @(株)松風&(株)モリタ製作所

おまけ【2】画像診断機器の歴史

【番外編】学生の社会見学引率 @(株)松風&(株)モリタ製作所

最後に

【番外編】学生の社会見学引率 @(株)松風&(株)モリタ製作所

今回、診療台や医療機器が作られる工程を工場で見学させて頂いて、自分が日頃当たり前に使用しているものが、これほど多くの人が手作業で莫大な時間をかけて作られていることを知りました。
工場に行くまでは、ほとんどがオートメーションで、流れ作業で量産されているとばかり思い込んでいました。
ところが実際には、機器が非常に精密であるために、少しも埃や塵がない空間で作業したり、完成までに2週間要する工程があったりと、想像とは遠くかけ離れたものでした。
日頃、当たり前のように使用したり、機器の調子が悪くなると不快に感じたりしていたものに対する考えが変わりました。
そして、谷先生が、「業者さんには優しくね。怒ったりするのは、もっての外やで。」と常々言っているのは、こういう意味だったのだと実感しました。
最後になってしまいましたが、今回、貴重な体験をさせていただきました、(株)松風と(株)モリタ製作所の皆さま、ありがとうございました。

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